伝統派空手は寸止めだから強くない。形とかばかりで意味がない!
そんな事をネットとかでたまに見かけたりします。
では本当に弱いのでしょうか?
私が実際に経験して思うところを書きたいと思います。
1.伝統派空手が弱いと言われる理由
伝統派空手について、型とかばかり、寸止めで強いわけがない!と聞いたことありませんか?
では、何故そう言われるのかを少し書いてみたいと思います。
1−1.寸止めで実際に当てないから
寸止めの組手をするので、実際に当てるフルコンとは違う。実際に当てないのに強いわけがない!という理由。
更に寸止めするという事は、殴られないわけで痛みに慣れていない。
フルコンタクト空手のような根性が備わるわけがない!
だから弱い!
1−2.型(形)の稽古ばかりで強くなる訳がない
実際に組手などの実戦形式の稽古をやらずに型(形)の稽古だけで強くなる訳がない。
型専用の選手がいるとか意味がわからない。
型の稽古ばかりやるよりも筋トレした方が強くなる!
1−3.気合とか意味がわからない
伝統派空手の組手は気合を入れないとポイントにならない。気合で人が倒せるとかおかしい。
そんな事をやって、プラスの力が出るくらいならみんなやっている。
意味のない事をやる必要がない!
1−4.下段蹴り等の実戦的な攻撃がない
フルコンタクト空手でもキックボクシングでもムエタイでもよく見かけるローキックや下段蹴りなどの実戦的な技が無い。
華麗さを求めるのか、見せたいのか中段蹴りか上段蹴り使えるのに、下段蹴りが存在しない意味がわからない。他の格闘技ではもっともよく使う技。
実践的じゃない!
1−5.スポーツ空手、競技組手
武道のはずの空手が競技化されて、オリンピックの種目にも選ばれた。
ポイント制の組手の試合で、傷一つなく優勝する試合はもはやスポーツ。
武道を名乗るものではない!
空手は武道でありスポーツではないのに、ほぼスポーツ扱いになっている。
1−6.有名選手が軒並みフルコンタクト空手出身
伝統派空手から有名選手は、最近でこそ堀口恭司を始め少しは見るようになったが、ほとんど見ることがなかった。
結局強いのはやはりフルコンタクト空手の選手が格闘技をやらせても強い!
バックボーンが伝統派空手は極めて少ない!
ということで、いくつかの事例を上げてみました。
まぁ、よく聞くのはこんなところではないでしょうか?
他にもいくつかあるのかもしれませんが、とりあえず私が思いつく限りではこれくらいですかね?
2.弱いとされる理由の本当のところ
上記で伝統派空手の弱いと言われる理由を書き出してみましたが、これは正しいのでしょうか?私の見解を加えたいと思います。
2−1.寸止めで実際に当てない
実際に当てないというのは少し違って、実際にはちょっと当てるものです。
「止める」のではなくて、「打ち抜かない」のが正解。
ダメージを与える打ち方をしていないのです。
よく小学生の頃にふざけてパンチを寸止めしたりしませんでした?
あれは本当に止められる自信があるからふざけてやるのであって、あたってしまったら喧嘩になりますよね。
要するにそれを組手の試合でやろうとしている訳ですね。
止められるということは、いつでも当てられるぞ!という意味です。
2−2.型の稽古ばかりで強くなるわけがない
当然ながら型の稽古だけやっている訳ではありません。
型の選手が大会に向けて型の練習を多くやることはあります。
ですが、組手もそれ以外も稽古は当然やります。
試合では型を専門にする選手はいますが、型だけをやる(しかしない)道場は殆どないと思います。
型もやるけど実践的な事もやるぞというのが正しいでしょう。
2−3.気合とか意味わからない
剣道の試合と同じで、打ち込み・気合・残心(構えに戻り相手の逆襲に備える)が揃って初めてポイントと見なされます。
この3つが揃うときというのは、圧倒的な優位な状況です。
つまりぐうの音も出ないほど、本来なら叩きのめしているぞ!という状況の現れなのです。
「当ててたらあんた倒れているよ!」と言うことですね。
偶然のパンチで相手を倒すのは単なるラッキーでしか無いという考えだと思います。
なので気合いで倒すと言うよりは、「攻撃成功」の条件の一つなだけです。
2−4.下段蹴り(ローキック)がない
実際には組手で禁止されているだけで、実際にはあります。
ローキック自体は、一撃で倒せる技という扱いではないのだと思います。
※まともに貰うと一撃で倒れますけどね、、。
なので、顔や胴体に対する攻撃に対しポイントを与える組手稽古では確かに無いのですが、別に技自体が無くなっている訳ではありません。
恐らく下段蹴りをポイントに入れると、割と簡単に取れてしまうからかなと思います。
★個人の意見です。
2−5.スポーツ空手・組手競技
試合になると組手も型もトーナメント形式で勝ち上がりとなります。
が、体力と魂を削ってボロボロになりながらようやく勝ち進み、、、というスタイルではありませんね。
人によってはそれは戦いなのか?と疑問に思う人もいるでしょう。
伝統派空手では、どちらかといえば互いに無傷で優勝というのが、望ましい姿です。
但し、やってみれば分かりますが、このスピードで攻撃を掛けるというのは、簡単ではありません。
そしてその防御もかなり難しいです。
戦いという意味において、グローブとリングの上での戦いを想定してはいません。
初撃において、決着がつくのだとしたらこの組手は相当に強いものだと思います。
そもそも本気で殴り合って怪我をしたら意味がないと思います。
2−6.有名選手が軒並みフルコン空手出身
これは有名選手が出場するのは、キックボクシングの試合だったから。
大晦日に格闘技がやり始めたのは私が学生の頃なので、20年以上前からだと思います。
基本的にはフルコンの戦い方はキックボクシングと通じる部分が多々あります。
最近でこそ総合格闘技としてテレビでやりますが、以前はキックボクシング一色だったと思います。
今は、MMAなどの別競技も出ており、多様化しているためキックボクシングルールが全てというわけではありません。
そもそもだったらキックボクサーが最強であるべきだと思います。
という感じで、一般的に弱いとされる理由を考えてそれに反対する意見を書いてみました。
こんな風に誤解や勘違い、知識不足、思い込み、説明不足、理解不足そんなものが多く存在してイメージづくられているように思います。
3.私が考える伝統派空手の弱いところ!
私は伝統派空手の公認三段で、キックボクシング歴10年です。
MMA歴1年です。フルコンの組手だけですが、2週に1回くらい行っています。
色々と経験したお陰で、色んなことがわかってきました。
実際に伝統派空手やキックを経験してみて、私が考える伝統派空手の「弱い」部分について記載したいと思います。
上記の「弱いと思われる理由」と少し違うのです。
もちろん道場によって異なりますし、一概には言えないのですが、私の経験上は正直そう思うという事です。
これは割と正直に書きます。
3−1.寸止め意識が強すぎて攻撃が弱い
「寸止めのための練習」ほど意味がないものはないと思います。
攻撃のための攻撃ではなくて、組手試合のための攻撃では本末転倒だと思います。
私はキックボクシングジムでサンドバッグを殴り続けてようやく自分の距離がわかり寸止めができるようになりました。
寸止め前提の攻撃しかしていない場合、実際に当てる事に慣れていないという事になります。
これでは攻撃の強さがどの程度相手に効くのか?理解できないと思います。
また総じてミットを持つと、攻撃が軽い人が多いのです。
すぐに引く事を体現すると当てただけという状況に満足するのかもしれません。
実際に当てる「当て感」が無いのです。
体重の載せ方で威力が違うとかは、寸止め前提では理解できないかもしれません。
なので分かっている人達は「巻藁」というサンドバッグ的なものを用いて練習したり、自分なりの当て感のある練習をするのです。
また蹴りとかは引き足を取る意識が強いので、威力が弱いという面もあります。
★ですが、引き足を取らないと足を掴まれるという事にもなるので、たしかに引き足を考えると力任せに打ち込めないという現実もあります。
3−2.実際に当てて分かることがある
威力同様に実際に当てることで解ることがあります。
フルコンの組手とかしていると、その意味がよく分かります。
例えば攻撃の当てる場所です。
相手のどこに当てればよいのか、「顔」と言っても鼻なのか、口元なのか、目の辺りなのか、耳のあたりなのか攻撃の当たる場所によって狙い所が解るものです。
また腕の位置や距離、力の入れ方、体重のかけ方とか、どうしたら最高の突きや蹴りが出せるのかは、やはり実際に当てること、そして同様に攻撃を受けることで理解が進むのではないでしょうか。
これは実際に当てないとわからない部分だと思います。
3−3.ローキック(下段蹴り)を使わない弊害
ローキックは割とリスク少なく出せる効果的な蹴り技です。
これがないという事は、ローキックの練習をしない人が多いのです。
なぜなら伝統派空手の組手では反則だからです。
ローキックはキックの中で前蹴りと同様出しやすいキックです。
このローキックを戦略的に使う戦い方もあります。
見せるだけとか、コンビネーションのきっかけに使うなどですね。
下段蹴りが無いと分かっている状態であれば、相手が蹴りの体勢に入ったら中段蹴りか上段蹴りのどちらかで下段を意識しない戦い方になります。
個人的にはこれはこれで微妙です。
またこれに近いのが「インローキック」です。実はこれが非常に効果的だったり、崩し技に使えるのでこの辺の技が使えないのは確かにもったいないと思います。
★ただし伝統派空手は足払いがあります。
3−4.攻撃を打たれない事による弊害
会社の空手部の先輩たちは、みんなフルコンタクト空手です。
彼らとスパーリングをする場合、最初体を軽く打って攻撃を受けてから徐々に強くしていく訳です。
これらは攻撃を受ける前提の理論、準備です。
伝統派空手ではこの相手の攻撃を受けるという意識がフルコンやキックに比べて少ないのは事実です。
フルコンの先輩が試合に出て言ってました。
「相手の拳になにか仕込んでいるじゃないかっていう位に痛くて硬かった」と。
これは実際に当て合うからこそ、分かる事だと思います。
打たれ強さという点においては、伝統派空手は実際に機会が少ないのが事実です。
打たれて強くなり、打たれて理解することも多いと思います。
3−5.殴られる、蹴られる恐怖心が少ない
伝統派空手に限った話ではないですが、実際に殴られる恐怖心というかプレッシャーが少ないのは事実です。
キックボクシングで言うところのガチスパーなどは非常に体力と精神力を消耗します。
所謂実戦的な練習なのですが、寸止めだから、、、と考えている人も結構いると思います。
これがガチンコで打ってくるぞ!?となれば、緊張感も全然違いますし、一瞬でも気を抜けません。
その中でどうやって自分の安全を確保しつつ確実に攻撃をするのか!?が問われるのです。
とある伝統派所属の流派は、素手で組手をします。その緊張感はもうね、、、。
実戦的なという意味ではこういった経験も重要だと思います。
3−6.組手のテクニックが実戦的でないものもある
組手のテクニックが競技に特化していて、実際に使えるものなのか疑問。
今はもうポイントは取れないようですが、「サソリ蹴り」という技がポイントが取れた時代があったようです。
サソリのように体を前に倒し、足をサソリの針のように上から振り下ろすのですが、体の構造上威力は低いです。
というか、それで倒されるという事は多分ないです。
見た目は華麗ですが、威力が低い攻撃です。
というか、それを打ったら仮に当てたとしても、逆襲される可能性が高いです。
同じように高速ワンツーというものがあります。
ある意味、ペースを握るとか出鼻をくじくという意味では実に実戦的な攻撃なのですが、一挙動でワンツーを打ち込むので、体の回転がほぼないワンツーになり、普通のワンツーに比べて威力が弱いです。
もちろん体重のかけ方次第では、一撃KOもできますが、、、。
いくらグローブなしの裸拳だと言っても、一撃必殺の考え方から外れるのではないかと思ってしまうわけです。
という感じですかね。
特に当てないという意識が強すぎる場合には攻撃面、防御面でどうなのかな?と思うことがあります。
ですがある意味それは正しくて空手において、例えば超接近戦になった場合、ボクシングで言えばパンチのレンジが短い、フックやアッパーが有効ですが、空手にはありません。
立ち技の格闘ではなく、掴みや投げ、金的や間接攻撃など打撃でない攻撃に入るのが空手です。
ですが、組手のルールでこれらはすべて反則なので、一度離れて攻撃をし直す事になります。
単純に組手のための練習で、これを忘れてしまったら意味がないかもしれません。
上記は個人的に、疑問に思う部分ですが、盲目に今やっている稽古が正しいのだ!と思い込む人はひょっとしたら、勘違いする可能性もあるなと思います。
大人であったり、子供であってもある程度のレベルの人は気がついている(というか理解している)のが、実際のところだと思います。
4.私が考える伝統派空手の強いところ
弱いところの逆で、私が考える伝統派空手の強みについて書きたいと思います。
これってかなり有利なんじゃないか!?と思うことも多いのです。
4−1.遠い間合いは超実戦的
伝統派空手の組手は顔面への攻撃(寸止めですが)が主たる攻撃対象です。
にもかかわらず、キックボクシングやボクシングと比較しても間合いが遠いのです。
これは何かというと、グローブではなく素手の戦いを想定した空手において、初撃で相手を倒す事が可能という現れで、一撃の攻撃を重視しているものです。
素手で戦ったことはそもそもないですが、鍛えた空手家や格闘家のパンチがまともに入れば戦いはそれで終わると思います。
試合ではなくて戦いを想定したときに、私が考える最も適して、一番安全な戦い方は伝統派空手の戦い方だと思います。
普通の人ではおそらく反応できないと思います。
4−2.技の変化と対応力が高い
伝統派空手は実は足払いが存在します。ローキックではなくて、足を払って体勢を崩したり、相手を転ばせて追撃する事が可能です。
実はこれによって色んなパターンの攻撃方法が生まれます。
例えば足払いを少し変化させて、ローキックやカーフキックにしてみたり。
足払いが得意な人はそこから攻撃を始める人もいるくらいです。
また、実は対応力が高いのが伝統派空手の強みだと思います。
対応力というのは、遠い間合いのおかげでタックルを仕掛けたり、キックボクシングで言うところのスーパーマンパンチ(正式名称不明)を打ってみたりできます。
この間合は割と独特で防御に徹していない反面、次への変化がやりやすいという面で優れいているように私は思います。
4−3.型(形)の理解が進むとより実戦的になる
型(形)は意味がないという人も中にはいますが、型の理解は実に実戦的だと思います。ただし、組手にという意味ではありません。
動きの一つ一つに意味があって、その攻防に無駄がありません。
これをきっちり理解すると相手の倒し方がわかります。
繰り返しますが、組手ではなく実戦です。
組手でやったら反則技ばかりです。
なので、実は型の稽古とは実は超実戦的な練習をしているとも言えるのです。
相手を掴み、ひねり極める、打つ、投げるなど想像している空手とは別物かもしれませんが、非常に有益だと思います。
5.まとめ 伝統派空手は結局強いの?弱いの?
伝統派空手は強いの?弱いの?
という点においては、ガッチリやり込んでいる人は間違いなく強いです。
どこの世界でもそうですが、ある一定レベルの人達は自分なりの理論や考えを持ってトレーニングや稽古をするので、絶対的に強くなります。
これはどの武道・格闘技に共通して言えることですね。
伝統派空手については、個人的には総合力は高いと思います。
少なくとも決して弱いという事はないと思います。
MMA、フルコン、キックボクシングを経験してそう思います。
実に理にかなった稽古体系と思想、理論が確立されていると思います。
強い・弱いは正直その人個人の問題だと思います。
ただし一方で、フルコンタクト空手に代表されるように、ガチンコの体作りや攻撃をガッツリ受けるわけではないので、フルコン空手と比較すると「相対的に」身体能力や打たれ強さは劣るものだと思います。
但し伝統派の選手もウェイトトレーニングやガッツリやり込んでいる人は、普通に強いです。
なので、その人次第としか言いようがない気がします。
また伝統派空手の強い・弱いの話をすると必ず出てくるのが、
「堀口恭司」さんですね。
彼は確かに伝統派空手出身の世界でも指折りの総合格闘家です。
ですが、彼は伝統派空手だから強いというよりかは、そもそも人としてずば抜けた才能が有ったと考えるほうが合理的です。
堀口恭司と那須川天心のキックボクシングの試合が本当に衝撃的でした。
伝統派空手の構え「まんま」で戦う堀口恭司ですが、キックボクシングの目線から見るとありえない構えだと思います。
こんなガードが下にある空手の構えでキックボクシングルールで戦う事自体ありえないのですが、あの神童那須川天心とこの構えのまま「キックボクシング」を普通に戦っているのが本当に信じられません。
この構えだとキックボクシングのパンチ・キックのコンビネーションに対応するのが大変なはずです。
伝統派空手の組手のように、試合が止まるわけでもなく、MMAの試合のようにタックル・寝技ができる訳ではありません。
ある意味攻撃特化型の構えで戦っているのですが、ボディーバランスとステップで那須川天心の天才的な攻撃を避ける訳です。
試合が面白い!!というよりは、衝撃的でありえない!!と言う感想ですね。
本当に彼は特別な存在だと思います。
今回は伝統派空手が強いのか?それとも弱いのか?を私の経験をもとに書いてみました。
皆さんはどう思いますか?
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