武道・格闘技をやっていて、たまに面白い話や良い話を聞けたりします。
また武道や格闘技をやっていたからこそ起こり得る体験なんてのも世の中にはあるのです。
空手や格闘技に関する私が過去に聞いたり・経験・体験した
「ちょっといい話」
を書いてみたいと思います。
1.都会の格闘ジム
キックボクシングのジムに通って1年か2年が過ぎた数年前の話です。
私の通っているジムは女性・初心者が半分くらいいるジムです。
なのでガチなプロを目指そうという人は少なく、健康維持やダイエット目的の人が多くいるのです。
都会のジム(新宿)だからか、それとも格闘技という特性からなのか、出入りも激しく1年もすると顔ぶれは殆ど変わってしまっているような感じです。
強さを求める人はジムを移籍しますし、やはり合わないという人も結構いると思います。
だからたくさんの人が入会する一方でたくさんの人が退会するのです。
私が通っていた理由は、空手の練習のためです。
動作が似ていると思ったキックボクシングを習い始めたのがきっかけです。
当初格闘ジムは怖いところだと思っていましたが、このジムは全く怖さとか厳しさとかはありません。
※私が最初に通った別のジムは怖かったですが、、笑
本当に初心者をターゲットにした格闘ジムなのです。
2.太った女の子
私は当時週に3日程度は少なくともジム通いをしていました。
キックボクシングを習い始めたら楽しくて仕方なかったからですね。
ジムではクラス練習がありまして、一緒に複数名の人達で練習します。
練習に来る人は様々で、週に一回来る人もいれば毎日のように現れる人もいます。
毎回一緒に練習していくうちに仲良くなってくるものです。
ある日、一人でサンドバッグを打っているとき、25歳くらい(と思う)女の子に声を掛けられました。
女の子「すみません。キック教えてもらえませんか?」
私は少々ビックリしました。
人数も多く初心者の多いジムですから、トレーナーが捕まりっきりだったり、教えてくれる人がいない場合も確かにあります。
でも、私自身は基本的にあまり話をする方ではないですし、女性会員さんだと「オジサンに話しかけられても迷惑だろう」と、ほとんど会話することはありません。
更に言うとナンパ野郎と一緒にされるのが非常に不愉快だったので、敢えて女性との会話は避けていた感じもあります。
※ガチな女性やスパーとかする女性とはよく話をします。
ご参考記事
なので、若い女性から声を掛けてもらうのはうれしいものですが、あまりにも意外過ぎてびっくりしたのです。苦笑
ちなみに私はこの女性を知っていました。
何故ならある意味、目立ってましたから、、、。
彼女の印象は、
・太っている(たぶん163cm、80キロくらい)
・結構熱心にジムに通っている(よく見る)
・いつも所在なさげ
・なぜかいつも独りぼっち
こんな感じの女の子でした。
私に話しかけた時は顔は真っ赤で聞き取れないくらいの声の大きさでした。
彼女なりに勇気を出したのかなと思いました。
3.女の子との練習
彼女は当然といえば当然ですが、初心者なのでまともにキックは打てません。
私はキックの打ち方を教えてあげました。
パンチの打ち方も教えてあげました。
彼女は一生懸命練習していましたが、あっという間に息が上がってきたので、
・力まなくて良い事
・呼吸を整えると体力が多少持つ事
・ジョギングではなくウォーキングぐらいの気持ちで練習
こんな事を話しながら、テクニックを教えてあげました。
それはある意味私も同じような悩み(体重面)を抱えていたから共感できたわけです。
でも女性特有の体の柔らかさがありました。
試しにハイキックを打ってもらったら、私よりも遥かに良いハイキックでした。
( ;∀;)
私は「ハイキックが素晴らしい!」とべた褒めしました。
彼女はにこっと照れ笑いを浮かべました。
そんな事があって、ジムで会うたびに彼女と一緒に練習するようになったのです。
一緒に練習といっても、クラスが終わって自主練している時ちょっとだけですが、、、。
彼女は恐らく毎日のように通っていたと思います。
彼女はめきめきと上達し、そして徐々に痩せてきたのです。
4.女の子の変化
数か月がたった頃、私は仕事の関係で新宿ではないエリアで仕事をしていました。
なのでジムには系列の別のジムに通っていたので、しばらく新宿にはいきませんでした。
そこで数か月ほど過ごして、新宿に戻りました。
久々に新宿のジムに行きました。
一人で練習していると
??「お久しぶりです!」
と声を掛けられました。
見覚えが無い女性から言われました。
私「??んーーっと、、、。」
と戸惑っていると
女の子「〇○です!!」
と言われました。
なんと太った女のコだったのです。
整形したとかそういうレベルじゃなくて、別人がそこにいました。
太った面影は殆ど無くて、都会のOLさんみたいな垢ぬけた女の子になっていました。
女の子「全然居ないからカラウサさん辞めっちゃったのかと思いました。」
そういってにこっと笑った顔は、確かに彼女でした。
私「ずいぶん痩せたね!!全然分からなかったよ。」
女の子「そうなんです!!頑張ったんですよ!!」
と言ってまた笑った。
彼女はサンドバッグに向けて綺麗なハイキックを「バシン!」と打ち込んだ。
そして何人かのジムメイトと談笑して、去っていきました。
もはや私が教えることなんて何もなかった。
5.そして卒業
彼女は物凄く痩せたのです。
そして本来の姿?なのか綺麗な25歳の女の子になっていたのですね。
色んな意味で自信もついたのか、元々そういう性格だったのかは分からないけど、ジムにもたくさんの仲間ができていた。
私は楽しそうに皆で練習している姿を遠目に見ました。
若者は若者同士仲良くやれるのが一番!
楽しそうに練習する彼女を見れて私も少しほっとしました。
そしてそれから暫くして、もう彼女を見かける事は無かったのです。
目標を達成したから?
単に嫌になった?
満足したから?
仕事を変えたのか?
引っ越したのか?
恋人でもできたのか?
それとも
怪我をしたのか?
病気になったのか?
実家に帰ったのか?
もう私に何があったのか知る術はありません。
もう何年も前の話。
きっともうジムにはいないのだと思います。
そしてもう二度と会う事も無いのでしょうね。
でもそれは寂しいとか、悲しいとかそういう事では無くて、
寧ろ喜ばしい事なのです!
こうして彼女はきっと新しい人生を歩みだしたのだと思います。
きっと太っていた自分を変えたくて、キックのジムに通ったのだと思うのです。
初心者用のジムとは言え、格闘ジムの敷居は若い女性にはやはり高いのではないでしょうか?
でもそうした勇気をちょっとずつ出して、少しずつ変わっていたのだと思います。
痩せたのは当然彼女の努力のたまもので、
私が何か手助けしたという事は無いです。
きっと彼女は「痩せて魅力的な見た目になった」という事以上のものを、
手に入れたのではないかなと私は思います。
こんな風に一生懸命ジムに通っていた人が急に居なくなるという事が多々あります。
ある人はより強さを求めてジムを移籍したり、目標を達成して終わりにした人もいたと思います。
でも、ここで努力し、変われた事はきっと彼ら・彼女らの人生のプラスに役立つと思います。
そんな人たちのほんの少しの人生の一部分に関われたという事は、
私にとってもとても嬉しい事なんです。
格闘ジムに限らないですが、色んな人と出会う事は楽しいですね。
ジムには年代、性別問わずいろんな人が集まります。
そんな人たちと一緒の時間を共有できることって私は何にも代えがたい素晴らしい時間だと思います。
いろんな形で「卒業」を迎えた人たち全て幸あれと願いつつ。
私はまた一人、サンドバッグに蹴りを打ち込むのです。w