人には絶対に負けられない戦いがあります。
今日はそんなお話。
1.空手会派の合同練習
私の所属している空手の会派はかなり大きな組織です。
関東を中心にいくつもの支部があり、沢山の子供たちが空手を学んでおります。
全小、全中に出場する選手も多く、トップレベルの選手は本当に全国的に有名な選手がいたりもします。
月に何度か合同の練習会があります。
私は指導者としては下っ端中の下っ端というか、他の先生達に比べても正直実績も実力も程遠く、本来教えるのもおこがましいのですが、それでも一応大人の仕切りが必要なので、極力参加するようにしています。
そんな合同稽古での出来事でした。
2.中学生の稽古に付き合う
合同稽古は基本強い選手しか集まりません。
小学生低学年の部が終わり、高学年&中学生の部が始まったのです。
私は中学生男子の練習のサポートに入っていました。
途中までは滞りなく稽古は進みます。
指導担当の先生の指導は見ているだけでも役に立つなぁと私も一緒になって話を聞いていました。
で、打ち込みとかやっていたのですが、組手の時間になりました。
すると指導担当の先生が言います。
「一人余っているので、入ってもらえますか?」
と、いうではありませんか。
まぁ、たしかに一人だけ相手がいないのも可哀想だし、ということで早速私も入ります。
但し、そもそも指導者として来ているわけで、防具(拳サポーター)など持っているわけではないので、組手と言っても当てないように軽くやる程度です。
3.一際大きな中学生
組手をやっていると指導の先生が、実力の似た同士を3人組くらいで組ませて総当たり戦の組手をするように、、ということになりました。
そして私も当然のように組み込まれ、中学生が2名私の前にやってきました。
そして二人共私よりもでかい、、、一人は180cmくらいある大きさ。
問題はデカさもさることながら、ガッチリとした体型で、これで中学生とかありえんだろう!と思わず思うレベルです。
するとフロアの端に陣取っている保護者の皆さんの中のひとりが私のところにやってきます。
「これ使ってください!」そう言って手渡されたのは、拳サポーター、、。
「!!?」
私は声にならない声を上げます。
「これを受け取ってしまったら、まじ組手をしなきゃならないじゃないか!?」
とはいえ、相手は中学生。
こちらは50年近い人生を歩んできているわけです。
人生の重みが違うのです!
私は拳サポーターをつけると、にこやかに言います。
「じゃあ、始めようか!」
4.スーパー中学生!
最初に中学生同士がやって、次に私が一人の中学生と相対します。
その選手は身長180cmくらいはある選手です。
お互い構えてみると、なるほど中々迫力があるじゃないですか。
「ふーん、やるやん!」
思わず心のなかで思います。
が、次の瞬間でした。
「パン!」という音とともに、気がついたら彼の拳が私の顔面を捉えていたのです。
正直一歩も動けませんでした。
「な!?何だ!?」
正直な私の気持ちです。
彼は予備動作なく、いきなりかなり遠い間合いから刻み突きを打ってきたのです。
私は避ける暇、いや気がつこともなくあっさりとやられました。
「ふはははは!油断したわ!中学生!」
思わずラオウのようなセリフを吐きたくなりました。
仕切り直してもう一度構えます。
少し警戒しながらこちらから仕掛けてやろうかと思ったその時です。
「パン!」と音がしたと思ったら、またしても刻み突きを打たれていました。
正直ショックです。
全く反応できなかったのです。
いくら強いといっても、実業団バリバリの選手と組手をしても反応が遅れてやられることはあっても、全く反応できなかったという事はほとんどありません。
過去に遡ってプロボクサーとのスパーリングで、ジャブを打たれたときに反応できなかった事があったのですが、それ以来です。
「こ、こいつ、、中学生にしてプロボクサー並か!?」
思わずそんなことを思います。
さあ、こうなるとこっちもヒートアップします。
これ以上舐めた真似をされると私の沽券に関わる一大事です。
周りにはたくさんの保護者の方々が、我々のことを見ています。
私は最早恥も外聞もなく、全力で行ってやろうと決意したのです。
5.絶対に負けられない戦いがある
最早油断がないどころが、余裕がなくなるまでに追い込まれました。
このままでは中学生に良いようにやられた、指導者もどき!認定されてもおかしくありません。
三度相対します。
じっくりと間合いを取り、中学生の動きを見ます。こちらも本気のステップで、入り込んでやろうと待ち構えます。
彼がすっと近づいた瞬間でした!
「見えた!!」
私は心のなかでそう思いました。彼の「起こり」が見えたのです。
「もらった!!」
私は渾身の中段突きを思い切り叩き込みました。
私の右手には彼の中段を捉えた感触がはっきりと残っています。
「!!!?」
と、同時に私の腹部に強烈な違和感、、いや痛み?最早痛みでもない
強烈な衝撃がありました。
どうやら彼の中段突きもまた、私の腹部を捉えていたのです。
いわゆる相打ちという事なのでしょう。
その衝撃で思わず呼吸が止まります。
ミドル級ボクサーとのお腹の打ち合いをしても、数発であれば普通に耐えられたのに、彼の中段突き一撃で、私のダメージは限界を突破したようです。
「ナ、、ナイス中段、、、。」
私は引きつった笑顔を作り彼に語りかけます。
お互い距離を取った所で、時間が来ました。
正直このとき、、、。
周りに他の保護者の方々がいなかったら、
痛みで転げ回っていたと思います。
強烈な腹部の痛みで顔は青ざめ、息も絶え絶えです。
正直、キックのジムでのスパーリングなら間違いなく倒れていると思います。少なくとも膝はついていたと思います。
人には誰しもが負けられない戦いがあると思います。
私はまさにここ!!このときです!
倒れてはならない!弱みを見せてはならない!膝をついてはならない!
引かぬ!媚びぬ!顧みぬ!!
サウザーのような高いプライドだけが私を奮い立たせたのです。
この痛みに耐えて、指導者の面目を保たなくてはならない。
腹部にバットでフルスイングされたんじゃないくらいのダメージを感じながら、必死に平静を装うこの瞬間こそ!
絶対に負けられない戦いだったのです!
正直気持ちは、ドラゴンボールのミスター・サタンの気分でした。
いや、これマジで、、、。
6.終わりに
後でわかったのですが、彼は別格の選手で日本でもトップの実力者でした。
とはいえ、まさかあんな事になるとは、、、。
私の考える絶対に負けられない戦いの例を一応書いておきます。
・電車内特急に乗った直後の腹痛
・朝のラッシュ時の腹痛
・飲みすぎてタクシーに乗った直後の吐き気
・昔のゲーセンにあった脱衣麻雀の最終戦
人生には時として、負けられない戦いがあるのです。
なお本記事における、ご意見、苦情、感想の一切をお断りしております。
嫌ならな読まなきゃいいじゃない!
ということです。
あしからずご了承ください。
(;・∀・)
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