【空手の大会】組手競技で準優勝した話⑤ 決勝 ライバルとの再会と勝負

 どうにか準決勝は判定で勝利し、決勝を迎えます。

私の体力は既に限界を迎えておりました。

水筒の水を飲むものの、体力が回復するわけではありません。

この時に、アミノバリューやらローヤルゼリー入りのドリンクを持っていればまた少し話が違ったかもしれません。

 

決勝の相手は試合前に挨拶に来てくれました。

試合に出ていると一度対戦した相手や待っている時に話した人等もいて、結構親しくなります。つまり顔見知りが増えるのですね。

なかなか大人になると友達が作るのが大変であったり、仲の良い友達と疎遠になってしまったりと難しい事もございます。

空手を通してこうして顔見知りができて話ができると必然的に仲良くなります。

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そしてこの人は私が人生で初めて大会で試合をした人です。

なんと2年後まさか別の大会の決勝でこうして戦う日が来るとは夢にも思いませんでした。

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 そしてまたこの人(ラグビーの五郎丸に似ているので五郎丸さんとする)やたらといい人なんです。大会で会うたびに挨拶をしてくれます。

それと同時に多くの人に積極的に話しかけて、人脈を築いております。道場でも率先して行事に参加しているらしく、私は知り合いなんて殆どいないのに、彼は多くの先生方と知り合いのようです。なんという政治力でしょうか。

空手もめきめきと実力をつけているがわかります。

彼は少し前の別の大会でも、型・組手共に上位入賞しておりました。

どうやら息子さんの小学校のPTA会長もやられているようです。

将来的に市議会議員にでも出ても全然おかしくないほどの逸材だと思います。この行動力と気の使い方、そして空手へかける情熱は高いポテンシャルを感じられます。

 

人生面では悔しさすら感じられないほど、清々しい負けっぷりではございます。

まさに日陰者の日の当たらないよう生きてきた私とは真逆の生き方。

陰と陽、プラスとマイナス、勝手にライバル視せざるを得ないわけです。

 

が、空手では彼がどう生きてこようと関係ありません。空手にかける情熱においてはこちらもあっさりと負けを認めるわけには行きません。

こちらも道場稽古は確かに参加できなかったかもしれませんが、週に3回通うキックボクシングをバックグラウンドとした意地もあります。あっさりと負ける訳には行かないのです!!

そしてそれが故に私は意地でも彼には勝たなくてはならないと思うわけです!

何故なら私の経験上、彼は学生時代きっと「モテた」に違いありません!!

許せません!!そう思い込んで私は闘志を燃やすわけです!!

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実は意外にも初対戦時は、なんと引き分け判定の結果、私が勝利していたのです。

しかし実はこの時、私は自分で負けたと思っていました。

この時の試合では旗は確かに私に上がって私は2回戦に進むものの、1試合目で体力をほぼ全て使い切ってしまい2回戦では良いところなく敗れ去ったわけです。

 

相手の手の内、実力もある程度わかっています。

そして私の準決勝の死闘の後1分の休憩を挟み、いよいよ決勝が始まります。

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正直、準決勝での戦いで体力はほぼ使い切った状態です。

1分は恨めしいほどの短さです。

対戦相手に対する情報を記憶を頼りに整理します。直前の試合も見てるわけですから、実力を分析します。

五郎丸さんは、身長体重ほぼ私と同じくらい、170cm前後、65kg前後だと思います。スタイルはどちらかというと、パワー型というかガンガンと前に突っ込むタイプです。

組手は上手で正統派な空手、あまりトリッキーな事はしないようです。準決勝で裏回し上段蹴りを打っていましたが、不発でした。この辺りも実力も私とほぼ同じような感じです。

そして特徴はなんといっても、松濤館流の道場で稽古しているだけあって、組手に迫力がありパワータイプの空手家ですね。私と同様に強く当てすぎの反則が私ほどではないですが、目立ちます。中段蹴りは多用ししかも強烈で、結構みんな嫌がっていました。

そう、要するにファイトスタイルが「完全に私」と被っています。

それもあって私は負ける訳には行かないのです!

 

いよいよ試合開始です。

 

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この試合、既に体力がない事は自分でよくわかります。

普通にやってもギリ勝てるかどうかの相手に今の状態で勝ちきるのは相当難しい事は理解しています。

ただし彼も私よりは1試合多く戦っているはず。それを考えても負ける訳には行かないのです。何よりせっかく手が届きかけている「優勝」は直ぐそこにあるのですから。

 

私は心に決めていました。絶対に先制する事。これが私の今回の作戦です。

「先取」を取ってポイントを守りきり優勝する青写真を描きます。

今の私の体力では攻撃で圧倒することは叶いません。ましてや豪打の相手です。

パワーで突っ込まれたら抑えきれないでしょう。

但し防御に徹する事ができれば相手の突き蹴りを、カットできる可能性があります。

可能であればその時に逆襲のカウンターを狙います。

 

サッカーで言うところの、引いて守ってカウンターの速攻を仕掛ける岡崎慎司のレスターのような戦略を用います。

その為にも必ず「先取」のアドバンテージは絶対条件なのです。

何故なら相手に先取を取られると実質1ポイント以上、上回る必要があるからです。

 

私は出だしで今大会で多用したワンツー(しかも強引バージョン)を仕掛けます。

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相手も飛び込んではきません。ひょっとしたら私のバテっぷりを見て、時間を掛けて攻撃を仕掛けるつもりかもしれません。

 

私は敢えて一旦離れてから、距離を保ちさらに一度離れると見せかけて、相手の右の方向に回り込みつつ拳を抑えます。

フェイントが決まったようで、相手の動きが一瞬止まったように見えました。

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私は間髪入れずに右の逆突きを素早く打ち込みます。右の拳を抑えられた事で防御する術が無くなっている訳です。左の拳が飛んでくる体制ではないので、その心配はいりません。寧ろ私の右の突きがあるので相手の左が来たとてまともに貰うことはないと思いました。

そしてタイミング、高さ、強さ完璧に近い入り方をしました。

次の瞬間審判の「ヤメ!」の合図がかかります。私はほぼ確信をしました。

「取った!!」と、、、。

審判は私に「有効」と「先取」の獲得を宣言しました。

 

この時私は、当初思い描いた戦略通りに事が運び、先制・先取もとれアドバンテージを手にしました。ここから先は相手の攻撃を捌き、凌ぎつつ戦略的勝利を収める算段でございました。

 

 

が!?

現実はそういう状況でもないようです。

 

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想定外だったのは、思った以上に体力が残っていなかった事でしょうか。

更に酸欠の為なのでしょうか、体の一部が痺れて来ております。

 

更にこの最悪のタイミングで思い出してしまったのです。

この対戦相手の五郎丸さんの強さを、、、。

そしてピンピンの状態でギリギリ勝てるかどうかの相手に、この状態(体力が底値)の私が勝てる訳無いだろうという至極現実的な状況をです。

ポイントをとったはずの私は、逆に精神的に追い込められる事になりました。

弱気な思考はダイレクトにその後の組手に響きました。

 

いや、思考がどうこうじゃなくて最早サンドバッグ状態です。

 

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五郎丸さんは案の定、波状攻撃を仕掛けてきました。

体力が満タンであれば、こちらも力技で対抗しますが、対抗するだけの体力がありません。

ちなみに揉み合いの際、押し込まれ床に倒されましたが、ジムで練習した「寝技・総合クラス」の動きが初めて役に立ちました。

※寝技の上級者になると倒れていても、手も足も出ずにやられます。

更に言うと相手のミドルキックは、よく見えていてかなりかわしたり、カットしたりできました。今回はこれが結構な収穫です。

 

対戦相手の五郎丸さんも、何本か強い当たりの反則を取られていましたが、この状況下でも私の攻撃が何本かコンタクト強すぎの反則を取られたのは、流石に苦笑いです。

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こうして長かった1分半の試合時間が終わり、私は2-4で敗れました。

途中で体力の残量が殆どないことを悟った私は、気持ちで五郎丸さん相手には勝てないだろうと、諦めたような気分になったのかもしれません。

スコア以上に押し込まれて敗れ去ったという印象です。

後で思い返しても、気持ちで負けるというのはある意味最悪です。大いに反省すべき点です。

 

ちなみに娘2(小学1年)に、「試合どうだった?」と聞いてみたところ、娘2曰く「ロボットみたいだった」と言っていました。

「え?ロボット?」と聞き返すと「電池が切れる寸前のロボットの動き!」と言っていたので、それ以上聞くのは止めました。

更に妻に頼んでいた動画の撮影は、妻の「撮り方がわからない」というこれまた意味のわからない理由で撮られていませんでした。

唯一残されていた試合の写真は、「挨拶している所」、「押し合っている所」、「反則した私が相手に謝っている所」のみ。もう見ることもないでしょう。怒

※ちなみに妻の携帯と私の携帯は同じ機種、、、。

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 ですが、実際にこうしてメダルを貰うとまた今更ながら実感が沸いてきます。

何かで入賞するという事もありませんでしたからね。

改めまして、空手とは面白いものだと思う次第でございます。

次こそ優勝!目指して今日もまた空手を学ぶのです。

 

今回で組手競技で準優勝した話シリーズ最終回です。

 

たったの数分のために、大の大人が空手の大会のために休日を潰してやってる訳ですから、それは好きな人達が多く集まるわけですね。

いろんな人が、たくさん空手をしているという事実は、空手を習っている身としては嬉しいですね。

別にメダルが欲しいとか、成績を残したいという思いが強いわけではありません。

空手をともに学び、空手で競い、高めあえるまだ見ぬ仲間が居るかもしれないと思うと、空手とは実に素晴らしいものだと私は思います。

皆さんはどう思いますか?

 

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