空手とキックボクシングって格闘技術として何が違うかわかりますか?
立ち技の格闘技としては同じですが、実際には色々と違うのですね。今回はそんな違いを書いてみたいと思います。
単純な違いは、以下のとおり。
空手(伝統派の場合)の特徴
・武道である
・流派等によってルールから違う
・礼に始まり礼に終わると言うとおり、礼儀を重んじる
・実は投げ技とか目潰し・金的もある
・仮想の相手と戦う型(形)と実際に戦う組手がある
・組手は小さなグローブ(拳サポーター)を利用するが、裸拳の場合もある
・組手はポイント制で勝負がつく、ダメージの大小は関係ない
・ポイントが入ると一旦試合が止まる
・空手衣を着て、帯を締める
・基本的に道場で稽古し、師範と呼ばれる先生に習う
キックボクシングの特徴
・スポーツである
・基本的にルールはほぼ統一されている
・礼をするとかはない。軽い挨拶程度。たまに挨拶しない人もいる
・伝統派空手にはない、肘やヒザがある
・試合はグローブをつけて戦う
・様々な重さのグローブを利用する。プロは小さく、アマチュアは大きい
・試合は倒せば勝ち。ポイントは優勢劣勢の印象判断により勝負がつく
・ダウンを取らない限り止まらない。基本的には時間制(ラウンド制)
・普段はTシャツ、短パン。試合は短パンのみ
・基本的にジムで練習し、トレーナーと呼ばれる先生に習う
私が感じる決定的な違い
このように空手もキックボクシングも同じ立ち技の格闘技ではあるものの、そもそも別物なんです。
では、私がやってみて違うなぁと思う点を改めて書きます。
1.戦い方の違い
伝統派空手は寸止めだが、キックボクシングは思いっきり当てます。
実は伝統派空手は、寸止めと言いつつ実はちょっと当てます。
当てるのですが、振り抜かない・押さない・打ち抜かないという要するにダメージを与えるような攻撃は行いません。
一方でキックボクシングは思いっきりダメージを与える打ち方をします。
こう言うと、なんとなくキックの方が「強い」と言う人が出てきますが、実はそんな単純な話ではありません。
何故かと言うと、空手は本来裸拳(グローブなし)で戦い、キックボクシングはグローブをつけます。
これは何を意味するかというと、空手は一発当たると相手は倒れます。
一撃をいかに早く相手より先に入れるのか。
つまり一撃必殺型なんです。
キックボクシングは、一発当たってもいきなり倒れる事は割と少ないとされます。
グローブの有無は、防御に大きく影響します。グローブのない空手の防御は極めて難しいのです。
一方キックボクシングは相手・自分問わずグローブが邪魔で攻撃がなかなか当たらないのです。
当ててもダメージが少ないので、連続で攻撃をして倒すのです。なので連続攻撃型なんです。
この違いは戦い方の違いを意味します。
要するに一撃で相手の骨を砕く空手の強さと、コンビネーションを駆使して脳震盪を起こして相手を倒すキックボクシングの強さ。
比べ様がないのです。
逆に考えてみてください。
ダメージを与える打ち方をする裸拳で顔面を強打する空手とグローブがない連続攻撃をしてくるキックボクシング。
どちらも試合にならないどころかタダのケガじゃすまないでしょう。
もはやスポーツでも武道でもありません。
2.精神性の違い
よく空手をやらせると礼儀作法が身につくと一般的に言われますね。
普段から礼儀正しく押忍の精神を根底に持つ空手と強さこそが正義のキックの違いです。
空手は黙想、正座して礼で始まり礼に終わる等、礼儀はどこの道場でもきっちりしている事が多いと思います。
ですが、別にキックは相手を敬わないかといえばそんな事はないし、それは個人個人で違いますね。
例えばですが一番顕著に出るのが、試合に勝った時ですね。空手では相手を敬う事を教えられるので勝った人が大喜びしたりする事を良しとしません。
一方キックは勝ったら大喜びして派手に喜びを表現します。
一見すると空手の方が日本人らしいのですが、やはり事は単純じゃありません。
私が思うのはキックの選手が大いに喜ぶのはその一戦にかける思いが強いのと、ヘタすると怪我をしかねない恐怖に打ち勝った時はみんな喜びもより強いでしょう。
それだけ真剣なんです。
どっちがいいかと言うよりも、トーナメント戦で一日で何試合もする空手と数ヶ月前から準備してようやく1試合だけ行うキックボクシングはそりゃ同じ喜び方にはならないのかもしれません。
ちなみに勝者が大いに喜んでもきちんと相手と試合後健闘を称え合うのは寧ろキックボクシングやボクシングの方が多いのでは?と思います。
ボクシングでよく挑発するシーンもありますが、あれは盛り上げるためにやることが多いそうです。
それが嫌いな人は嫌いでしょうけどね。
でも言い換えると闘争心が有るという言い方もできますね。
私個人としては空手もキックも礼儀的な部分はあれども、人として成長できるという意味では実際にはそんなに変わらないのでは?と思います。
3.型(形)とシャドーボクシングの違い
空手には型(形)と呼ばれる競技があります。
型をしっかりと打てると組手も強くなると言われます。
一方でそれぞれ専門性が強く、型しか行わない選手もいるぐらいです。
キックボクシングには型なんてものはありません。
でも実はこれほとんど一緒です。
型とは仮想の相手を想定し、一人で戦うものですが、これはキックボクシングで言うところのシャドーボクシングと同じ意味合いです。
ですが、やることは一緒で仮想の相手を想定して自分の動きを確かめたりするのですが、実際には自分のフォームの確認だったりもします。
当然順番なんてのもありません。
ボクシングでもシャドーが上手い選手は実際の試合も強いというのは一般的に知れ渡っている事ですね。 でもシャドーボクシングの試合はありません。
4.練習メニューの違い
空手の道場によっても違うし、流派によっても違うのですが、私が思う練習での違いです。
フルコン空手の場合もまた違いますが、取り敢えず伝統派とキックを比べますと練習内容が全然違います。
空手の場合は型の稽古、基本稽古、移動、組手等の稽古を行いますが、キックボクシングもまた同じようなルーティンの練習が存在します。
縄跳び、シャドー、サンドバッグ、筋トレ、スパーリング等ですね。
でも実はこれらの練習内容は似てたりもします。
だって蹴りはキックと呼び変えられているだけですし、突きはパンチと言われますしね。
だけどもやっぱり違うんです。色々と!!
結局のところ、空手もキックも試合で勝つためにはどうするのか?と言うのを念頭に練習をしますから、細かいところでは結構違います。
ボクシングでは一般的な防御技にパーリングという技があります。
パンチを叩き落とすのですが、空手ではこの技の練習は一般的にはしないようです。
でも全日本とかですと見かけます。
要するにグローブが有るなしの要素で内容が違うんですね。
蹴りもまた然りで、空手の蹴りは上段蹴りは振り抜かないのですが、キックは振りぬきます。
空手はケリでもダメージを与えちゃいけないのです。
でもやればわかるのですが、上段蹴りを打てる人は打ち抜こうと思えば打ち抜けます。要するにダメージを与えない動きもまたケリを制御している訳です。
やろうと思えばノックアウトする事もできるのにやらないのです。
これが空手の上段回し蹴りの実態ですね。
一方キックボクシングの場合は思いっきり打ち抜きます。
ダウンを取れる必殺技ですからね!
5.ステップと間合い・距離の違い
ダメージを与える目的のキックボクシングと一撃で勝負が決まってしまう空手ではそもそも距離やステップが違います。
伝統派空手の間合いは基本的に遠いですね。
遠くから踏み込んで一瞬で自分の前に現れ、突きを打ち込みます。
一方キックボクシングの間合いは、やや近いです。
これはある程度の防御も含めてのことでしょうね。
連続で打ち込まないと倒せないわけですから、遠い間合いで戦い続けるという訳にはいきませんね。
またステップにおいては、空手の場合は後ろ方向に逃げる事も考えられたステップがよく用いられますね。
キックの場合はケリが届くか届かないかの距離を保ちつつ戦います。
後ろに逃げるよりもパンチを防御して逆襲した方が倒せますからね。
でも伝統派空手のステップとキックボクシングのステップは距離の違いがかなり違います。空手の踏み込みはかなり遠めの位置から飛び込みますが、キックは割と近いですね。その影響もあるのでしょうけど腰の高さもキックの方が高いですね。当然人にもよりますが、、、。
6.その他の違い
その他でも細かいところは結構違います。
例えばパンチと突きは似ていて違います。
違うけど同じです。これは微妙なのですが、空手の突きは肩を顔に付けるぐらい上げて打つという事はあまりしません。
構えた位置から最短最速で突きを繰り出すのですね。
一方キックボクシングでは攻撃であるパンチを出しながらも肩で打たれないように防御しつつパンチを出します。
更に例えば前蹴りですが、キックの前蹴りは相手に入ってこさせないように距離を取る意味で頻繁に使いますが、空手の場合はそれでポイントを取るにはしっかりと極め技としての要素が必要です。
キックのように気軽に出せる技ではないイメージです。
最後に空手とキックの共通部分について
空手とキックの違いとして書いてきましたが、同じような要素もたくさんあります。
ほぼ見かけなかった裏廻し上段蹴りをキックや総合の試合で見かけたりもしますし、キックの試合でいきなり空手の動きをしたら相手を混乱させることもできます。
面白いのがキックボクシングにおいて、割と「こうしなさい」「ああしなさい」という事は言われずに、空手の動きをするとそれはそれでその選手の個性としてみなされます。
なのでいきなり裏回し上段蹴りでペースを握るとかも可能です。
またステップワーク 、フットワークやパンチや蹴りの筋肉、そもそも打たれ強い体つくり等共通している部分もかなりあります。
キックのジムには空手出身者がかなりいます。昔テコンドーやっていたとかだと蹴り技が多彩だったりしますので、共通部分も多いですね。
こういったバックグラウンドのある選手と練習すると楽しいです。
私個人の印象では試合を行う上での自由度はキックボクシングの方が高いです。
ということで、本日は空手とキックボクシングの違いについてでした。
似ている部分と異なる部分もありますが、その経験は決して無駄にはならないと思います。
ただ過去にトレーナーに言われた「所謂二刀流的に、両方やっている人はいつか迷う時が来る」という言葉は本当だと思います。
でもそれすらも達観している人は達人になれるかもしれません!
いろんな経験は邪魔にはならないと私は信じております!
皆さんはどう思われますか?
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