細か過ぎて伝わらないキックボクシングの魅力・楽しさ・素晴らしさシリーズ29回目の今回は「距離を制す!ステップワーク」についてです。
いや、それ何が面白いの?と思う人もいるかもしれません。単なる移動じゃないと思うかもしれません。でも上級者の移動はまるで魔法です。面白いですよ!
これはキックボクシングに限った話ではないと思います。私は伝統派空手からキックボクシングへ来たので伝統派空手の踏み込みというか距離を知ってますが、空手の上級者は凄いですよ。遠い間合いから一気に詰めてきて気が付くと数発打たれてるという感じなんです。それも結局はこの間合いを一気に詰める移動に他なりません。まるでワープしてくるような錯覚を覚えます。
キックボクシングでも似たような事が起こります。でもキックの場合は単発で試合を決めると言うよりかは連打してノックアウトを狙うので、連打狙いなので距離は近くなります。至近距離での打ち合いになるので、緊張感もぐっと上がりますね。
やはり上級者になると剣道や空手の動きと一緒で上下動なくあっという間に間合いを詰めてくるものです。そしてこの距離と空間を制されてしまうとあっという間に相手の攻撃を受けてしまいます。
ではどうして上級者はこのような移動ができるのかと言うと一言で言うとステップワークが上手だからということになります。キックボクシングもボクシングも基本は同じで体重を載せて攻撃をします。パンチは腕の力だけで打つのではなく、キックは足の力だけで打つのではなく、自分の体重を掛けて打つものです。そうする事によりパンチやキックに重さが増して相手に大ダメージを与える事が出来るわけです。
この体重を掛けるというのが簡単そうで中々難しいのです。上級者の打撃と普通の人の打撃の違いは一目瞭然というか、受けると全然違います。ほんのわずかな違いに感じるかもしれませんが、体重のかけ方でダメージは相当違います。
この体重移動で使うのも足ですね。強靭な足腰があってこその動きなのです。この動きの呼び水になるのがステップです。
当然ステップは攻撃の間合いに移動したり、逆に相手の間合いから逃げる為の移動手段でもあります。でもそれだけじゃなくてフェイントや攻撃のバリエーションを増やすためだったりと目的はさまざまです。
ボクシングでたまに「足を止めて打ち合う」という言葉を聞いたことがあるかと思います。これはステップをやめて殴り合うという意味です。ステップは攻撃も防御も使いますから、足を使う防御を捨ててお互い攻撃のみに徹する時はステップをしないという訳です。
でもこの状態のボクサーをよく見てみてください。体の軸はぶれなくとも肩の位置は前後に激しく動いているはずです。そしてパンチには体重を乗せているはずです。連続攻撃を仕掛けると相手の位置がずれたり微妙に距離感がずれたりします。それを調整するのも小さなステップの役割なのです。
なのでステップが上手な人は距離を制することができるのです。距離を制すと攻撃は当てやすく、防御はより固くなるわけですね。必要以上に動き回るとバテてしまったりスキが出来てしまいます。
やっているとわかりますが、ステップは思いのほか辛いのです。でも辛いからといって何もしなければあっという間に相手に捕まってしまいます。特に私はふくらはぎの筋肉が重要だと思いますが、足腰全体、体や重心もステップには重要なんですね。だからこそ縄跳びを飛んでステップワークを鍛えるのです。
プロボクサーに聞くと、ある日本人世界チャンピオンはこのステップだけをひたすら練習するらしいです。それ程までにステップというのは重要なのですね。
さて長々と書いたのですが、実はステップは結構センスというか教わらなくてもできる人がおります。もちろん足を鍛えることは必要なのですが、距離だったり攻撃のつなぎだったりは中々言われて身につくものでもないのですね。だからいろんな練習の中で徐々にステップも身についていくのかなと思います。
つまりステップが上手な人は、ほぼ間違いなく強い人なのです!パンチやキックの強さが全てじゃないわけですね。
コレがまた楽しいのです!